中国渡航二日目

早朝6時50分に起床。昨夜南京グランドホテルに到着したのが夜の12時でそこからチェックインして着替えて風呂に入ってとやっていたら寝るのが深夜2時頃になってしまった。睡眠時間は5時間程度。体がだるいが不思議と体調は良い。朝食はビュッフェ方式でこれまた色々食べた。餃子、炒飯、包子。南京の料理は日本の中華料理の味と近いんだそうであっさりめで食べやすい。ホテルの外観、内装に関しては昔泊まった日本の綺麗なホテルと似ていて部屋の設備も申し分なかった。が、電圧の関係でペアの子が持っていたヘアドライヤーが使えずタオルオフで髪の毛を何とかセットした為にボサ頭である。そもそもドライヤーくらいあるだろうと高を括って持ってきていない自分が恥ずかしい。今日は南京の高校生と交流する行事の後に南京城壁博物館、夜は夫子廟という予定。まずは南京市田家炳高級中等学校に交流会へと向かう。我々訪中団のメンバーは大学生、社会人、高校生で構成されていて年齢の幅が広い。中でも今回の訪中で最も活躍するのは高校生の2人だ。彼ら2人は愛知県でも有名な名門校出身で、日頃は塾通いで日夜勉強に励んでいるらしい。今日の交流会では彼らのうちの1人がディアボロ(砂時計型のコマを糸で操る大道芸の一種)の演目を壇上で披露した。日本と中国の重役共々大盛況だった。勉強の才もあれば大道芸も出来るなんて、これが才色兼備というやつなのだろう。その後団員は三手に分かれた。自分のグループは南京の高校生たちに校舎の二階にある教室へと案内された。彼ら南京の高校生たちは日本語がとても上手だ。それでも言語の壁が存在しないわけでは無いということを知ってか、非言語ゲームを中心としたプログラムで日中の学生たちの交流が始まった。絵しりとり、クイズ大会、南京の観光名所と南京料理の紹介、ダンスの披露。彼らは勉強熱心で可愛らしい感じだった。クイズ大会の正答者には南京のお土産が配られる。南京の土地の広さを勘で答え見事正解、パンダのかわいいキーホルダーを貰った。雑談が交わされるムードになったので、隣に座った南京の女学生に日本で人気のキャラクター「ちいかわ」を教える。彼女は「ちいかわ」を知らなかったらしい。彼女は「かわいいですね」と話した後に、ノートの片隅にひらがなで「ちいかわ」とメモを取る。日本語話者同士での会話とは一言一言交わす言葉の重さが異なるような感じがした。それにしてもこの教室の光景は何処か感動的だ。たった数十分に出会いの高揚感と別れの寂しさがある。異なる文化に思いを馳せ、言葉を交わす人々の姿は何処か映画的ですらある。南京市田高校の校舎は規模感が日本のものとは全く異なる。豊かな自然と大きな白亜の校舎が調和するような景観。道端で卓球やバドミントンで戯れる学生たち。どちらかと言えば日本の大学を想像して貰えば分かり易いだろう。何処か最近観た台湾映画「クーリンチェ少年殺人事件」の舞台となった校舎を想起させるものがある。交流会が終わると南京市田高校の生徒の案内で食堂に移動。高校支給の弁当を食べる。五香粉香る角煮と白飯、白濁したスープ。美味しい。うまく会話に入れずに1人で黙々とご飯を食べていたら、横に座った、訪中団の社会人の先輩に声を掛けてもらった。その先輩はいま社会人2年目で大学在学中に中国語スピーチコンテストの景品として中国旅行を勝ち取るもコロナの影響で行けなかったのだとか。2年越しに日中友好協会から連絡があって中国渡航が叶ったんです。という話を聞き、何だか他人事だとは思えなかった。全員で集合写真撮影を終え、一行は南京城壁博物館へ。道中、バスの窓から南京の都市景観を楽しむ。現代的なビル群と気が遠くなるような数の集合住宅。それでいて背の高い街路樹や巨人サイズの観葉植物のような、見たこともない植物が建物と建物の間に植っている。日本のこぢんまりとした地方都市の風景が身に染みついている自分にとって南京の景色は異様に写る。それでいて名古屋、大阪、東京といった日本の主要な都市とも規模感は圧倒的に異なる。複数の車線が並列する広い道路、縦型の信号機なんかはハリウッド映画で見たアメリカの公道を思わせるものがある。中国政府から雇われた若い役人がバスガイドを務め、流暢な日本語で街の景観や南京の文化について説明してくれる。南京に植っている街路樹はアオギリと呼ばれる品種なんだそうで、アオギリの枝が干渉してしまう為に二階建てのバスは南京に存在しないんだそう。それほど自然と人々の生活が近いということでもある。発展した街の中心部には瓦屋根と煉瓦で作られた中国の長い歴史を感じさせる伝統的な建造物がそのまま残されている。かつて孫文が建立した南京総督府を通り過ぎ、バシャバシャ写真を撮っていたらいつの間に南京城壁博物館に到着。先ずは空港と似たチェッカーマシンにリュックを通して持ち物検査。先ほどの役人が学芸員の解説をリアルタイムで翻訳する。事前に配られたイヤホンから解説の音声が聞こえる。こんなにも大規模な城壁がそのままの形で残されている都市は世界的にも見ても珍しいらしく、南京はとても稀有な街なんだそうだ。それでも壊された城壁はあるらしい。壊された南京城壁の煉瓦の一部は博物館に入ってすぐの展示室に綺麗にディスプレイされている。明朝時代の歴史から朱元璋の功績、火銃やら曲刀を眺め、一行は博物館を後にした。古代中国の歴史に対して見識が無さすぎて大学受験時代に聞き齧った永楽帝の名前くらいしか分からなかった。何となくアカデミックな気持ちになった後は実際の南京城壁の上へと登る。街を見渡せる、パノラマ的なスポットで暫く南京のスケール感に浸る。日が傾き薄橙の日の光が遠景のビル群の輪郭を曖昧にさせていて、美しい。南京城壁は見えないくらいまで遠く続いていてそれにも圧倒される。その後、バスで南京グランドホテルへと戻り、夕食会に参加。団の代表と中国語話者の役人と団員数名が一つのテーブルに集まりご飯を囲む。2回目の回転卓式本格中華。南京の高校生から勧められた塩漬けの鴨肉が美味しい。白酒とビールも大変美味しい。団の代表の方に「你还会再吃同样的东西吗?」と聞かれ、咄嗟の中国語に対応できず、意味もよく分からずに首を横に振るしかなかった。大変情けない。才色兼備の高校生が意味を答え、赤恥をかいた。少し悔しかったので「在日本、我喝过白酒」と数ヶ月前日本で飲んだ中国の「江小白」というお酒の画像を見せ、中国語話者の役人と少し交流した。残念な事に日程の関係で、予定されていた夫子廟観光は取りやめになってしまった。ビールと白酒の飲み過ぎで潰れながら夕食後はお土産を探して南京のスーパーへ。中国でしか見ないようなお菓子やお酒を一通り持ってレジに並び、決済をしようとした。しかしこちらの財布には大きいお札しかなく、お店側もお釣りがないのだそう。オロオロしていたら先輩が足らない分を払ってくれた。ありがとうございました。暫く歩いて帰路につき、ホテルに着く頃には酔いで頭が刺さるように痛い。体がベタベタするのが気持ち悪いので早速入浴する。シャンプー、リンスは持ってくるのを忘れた。必然的にホテル備え付けのシャンプーとコンディショナーで髪を洗う。匂いが日本のものとは異なる。中国独特の香りが身体に染み付くと思うと何だか嬉しかった。翌朝を考え、早めに就寝。